狂った魔法からは逃げられない〜歪んだ愛の鎖〜
「ミラ!!」

ルーカスさんに大きな声で名前を呼ばれ、抱き締められる。刹那、頭痛は何もなかったかのように消えてしまい、映像も煙のように頭から消えた。

「ミラ、大丈夫?」

ルーカスさんが私を心配そうに覗き込む。私はゆっくりと立ち上がりながら、「大丈夫です」と微笑んだ。さっきのは何だったんだろう?もう、何が頭の中に浮かんだのか覚えてない。

「何か思い出しそうだったんですけど、ダメでした」

そう言った私に、ルーカスさんは「無理に思い出さなくていいんだよ」と返し、私を抱き締めた。



私には、この家で暮らしている一年以外の記憶がない。いつの間にかこの家のベッドに寝かされていて、ルーカスさんから名前と、恋人であることを教えてもらった。

『ミラは可愛いから、誰かに攫われないか心配だから』

そう言って、ルーカスさんは私を家の外へ出してはくれない。足につけられた足枷も、悪い人が私を攫わないようにと説明され、記憶を失う前の私はそれを受け入れていたのだという。
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