狂った魔法からは逃げられない〜歪んだ愛の鎖〜

「逃げなきゃ！！」

体が小刻みに震えていく。何とか震える足で立ち上がり、書斎を出て廊下を走った。ジャラジャラという音がうるさい。

私は、とある村に両親と姉と兄と共に暮らしていた。ある日、私は森の近くにある祖母の家に母に頼まれ、家で焼いたケーキを届けているところだった。

「こんにちは、お嬢さん。どちらへ行かれるんですか？」

歩き慣れた道を歩いていると、突然背後から声をかけられた。振り返ると、誰も先ほどはいなかったはずなのに、ニコリと笑いながら立っている男性がいる。それがルーカスさんだった。

「えっと、おばあちゃんの家に……」

畑仕事を人がほとんどのこの村の中で、まるで貴族のような装飾が施された美しい服を着た彼は、美しくもどこか不気味に思えてしまい、私は目を逸らしてしまう。すると彼はこう言った。

「よろしければ、おばあ様の家までお送りしますよ。この辺りは森がすぐ近くですから、山賊や獰猛な獣が出てくるかもしれません」