魔法のいらないシンデレラ 3
次の日。

青木と奈々は、出勤してすぐに総支配人室を訪れた。

「アボも取らずにすみません」

頭を下げる二人に、一生は首を振る。

「いや、構わない。それよりどうした?」
「はい、あの。まずは昨日のお礼を言わせて下さい。フレンチレストランで、美味しいお食事を頂きました。ありがとうございました」

二人はまた揃って頭を下げる。

「どういたしまして。良い時間を過ごせたか?」

すると二人は顔を見合わせてから、一生に向き直って姿勢を正した。

「はい。私はまず彼女に謝りました。会議室での失言と、この4年間、彼女を不安にさせたままでいた事。自分の中では彼女との結婚を決めていたものの、照れくさくてそれをしっかり伝えずにいた事を」

青木は隣に立つ奈々に目を向ける。

「こんなに長い間、自分の気持ちをきちんと言葉で伝えず、心細い思いをさせてしまい、本当に悪かった」

奈々は、ゆっくり首を振る。

青木はまた一生に向き直った。

「これからは心を入れ替え、彼女の気持ちにもしっかり向き合える男になると誓って、彼女にプロポーズ致しました」
< 101 / 236 >

この作品をシェア

pagetop