魔法のいらないシンデレラ 3
「まあ、そんな訳で、ちょっと驚いているんだ。まずは少ない物件数から始めて、希望者を募るが、もしそれでも希望者が後を絶たなければ、もっと手広く探すかもしれない。そうなると、このプロジェクトも長期に渡る可能性がある。みんな、お付き合い願えるだろうか?」
「もちろんですわ」

今井が笑顔で一生に頷くと、皆も同じように頷く。

「ありがとう!心強いよ。もちろん無理なくで大丈夫だ。よろしく頼む」

ホッとしたように一生が笑いかけ、皆も一層気持ちを1つにした。

そして分厚い資料をめくりながら、皆で検討していく。

前回挙げられた都心部と郊外の計3ヶ所に、メンバーが見つけてきた物件が紹介される。

そこからいくつか絞り、一生が下見に行く事になった。

小雪が提出した資料についても取り上げられ、皆は興味深く小雪の補足を聞く。

一生は小雪に、委託している小雪のシッター派遣会社に、社宅へのシッターもいずれ頼みたいと言い、上層部に話をしてもいいか?と尋ねた。

「も、もちろんです!私のような下々の人間ではなく、どうぞトップの方同士でお話して頂ければと思います」
「分かった、ありがとう。介護やホームヘルパーについてはどうだろう。誰か心当たりあるかな?」

すると今井が、時々お願いしているヘルパー派遣会社の資料を、次回提出すると言う。

他のメンバーも、引き続き情報収集や社員の意見を拾っていくことを確認し、ミーティングは終了となった。

最後に、瑠璃が立ち上がって挨拶する。

「産休に入る為、次回以降しばらくはオンラインでの参加になります。情報収集は続けていきますし、プロジェクトにも今後変わらず取り組みますので、どうぞよろしくお願い致します」

頭を下げると、皆が一斉に拍手する。

「産まれたら、教えて下さいね」
「可愛いでしょうねー、お二人の赤ちゃん。オンラインで会わせて下さいね」

最後に今井が声をかける。

「瑠璃様、どうぞお身体お大事に。元気な赤ちゃんが産まれてくるようお祈りしています」
「皆様、ありがとうございます」

一生も立ち上がり、瑠璃と二人で頭を下げてから微笑んだ。
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