魔法のいらないシンデレラ 3
小雪はその様子を見ながら、目を細める。

(とっても優しいお母様。すみれちゃんを大事に育ててらっしゃるのね)

すみれに絵本を読み聞かせたり、どんな音がするかしら?と言いながら、音の鳴るおもちゃを手に握らせたり…

愛情たっぷりに接している様子に、小雪も嬉しくなった。

すみれもすっかり安心してこの場所に慣れ、2回目からは、とくにグズることなく瑠璃と離れる事も出来た。

そしてついに瑠璃の時短勤務が始まり、すみれは週に4日、5時間の定期保育と決まった。

それに伴い、家族構成や住所も含めた細かい項目のカウンセリングシートを記入してもらう。

そこで初めて、早乙女は瑠璃の旧姓である事に小雪は気付いた。

(本名は神崎(かんざき)瑠璃さんだったのね。じゃあすみれちゃんも、神崎 すみれちゃんか…お父様は、神崎 一生さん。ん?なんか聞いた事あるような… )

かんざき、かんざき…と何度か繰り返した後、ようやく小雪は、あっ!と思い出した。

「も、もしや総支配人?!そうよ、確かにそうだわ。ってことは…」

瑠璃は総支配人夫人、そしてすみれは総支配人のお子様。

「ひゃーーー!!」

小雪は、両手を頬に当てたまま仰け反って驚いた。
< 13 / 236 >

この作品をシェア

pagetop