魔法のいらないシンデレラ 3
「わー!ホットサンドだ!」

テーブルに並べられた朝食に、すみれは目を輝かせる。

「かあさまのホットサンド、だーいすき!」
「よし、じゃあ食べようか」

いただきますと手を合わせてから、二人でまだ温かいホットサンドを食べる。

(瑠璃、陣痛が来てるのに作ってくれたのか…)

胸に込み上げるものがあり、一生はグッと堪えてホットサンドを噛み締めた。

食べ終わると、すみれはお皿をキッチンに運ぶ。

一生は、食器洗いを済ませてから時計を見た。

時刻はまだ6時前。
だが、これ以上経つと、白石が一生を迎えにホテルを出発してしまう。

一生は、早瀬に電話をかけた。
スリーコールで早瀬が電話に出る。

「早瀬か?俺だ。朝早くからすまない」
「いえ、もう起きておりましたので」
「そうか。実は瑠璃が病院に行った」
「えっ、もしや陣痛が?!」

早瀬が上ずった声を上げる。

「ああ、おそらく。早瀬、悪いが白石に伝えてくれないか。8時半にうちに迎えに来てくれと。すみれと一緒に俺も病院に行く」
「かしこまりました。総支配人の本日の予定は、全て調整致します。何かあれば、メールでご報告致しますので」
「分かった、ありがとう。すまないがよろしく頼む」
「いえ、こちらのことはご心配なく。ご無事な出産をお祈りしております」

すると、後ろで叶恵の興奮した声が聞こえてきた。

「響さん!もしや瑠璃さん、産まれそうなの?わー、瑠璃さん、頑張ってー!赤ちゃんも頑張れー!」

一生は、クスッと笑った。

「瑠璃にも伝えるよ。ありがとう、早瀬、杉下くん」
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