魔法のいらないシンデレラ 3
「一生くん!」

ふいに呼ばれて振り返ると、白衣姿の瑠璃の父が廊下を歩いて来るところだった。

隣を歩く看護師も、にこやかに一生に会釈する。

「お父さん、あの、瑠璃は?」

はやる気持ちを抑えながら聞くと、瑠璃の父は頷いて笑いかけた。

「ついさっき、産まれたそうだよ」
「えっ?!」

一生は、驚いて立ち尽くす。

「る、瑠璃は?無事なんですか?」

隣の看護師が笑顔で頷く。

「はい。奥様も赤ちゃんも、ご無事ですよ」
「よ、良かった…」

声はかすれ、思わず膝から崩れ落ちそうになる。

「とうさま?」

腕に抱いたすみれが、心配そうに顔を覗き込んできた。

「すみれ、赤ちゃん無事に産まれたんだって。かあさまも大丈夫だ」
「ほんと?!よかった!」

満面の笑みで、すみれは一生の首に抱きついた。
< 133 / 236 >

この作品をシェア

pagetop