魔法のいらないシンデレラ 3
「そ、そ、そんな…。無理ですよ!俺なんて」
「いや、お前しかいない。総支配人に、次に企画広報課の課長になるのは誰が適任かと聞かれて、俺も青木課長もお前の名前を挙げた。総支配人も同意されていた。それに、青木課長が2年前に部長を引き受けていれば、今頃お前が課長になっているはずだろう?」
「で、でも、お二人同時にいなくなるなんて、企画広報課はどうなるのか…」
「大丈夫だよ。奈々ちゃんや瑠璃ちゃんもいてくれるし、それに青木さんも俺も、同じ営業部にいる事には変わりない。何でも相談に乗る」

山下はうつむいた。

(正直言って心細い…。でも、青木課長にも加藤さんにも、ちゃんと昇進して欲しい。それなら俺も、やるしかない)

決意を固めると、顔を上げて加藤を見る。

「分かりました。青木課長と加藤さんが安心して昇進出来るように、自分もしっかり企画広報課を守っていきます」

加藤は大きく頷いた。

「ああ、頼んだぞ。お前なら大丈夫だ。今までお前がどんな仕事にも、真摯に真面目に向き合ってきたのを、俺も青木課長も良く知っている。課の雰囲気を盛り上げようとして、率先してバカな事して、空回りして逆に場をシラケさせたり、鬱陶しがられたり、ドン引きされたり…」
「ちょ、ちょっと、加藤さん!褒めてるんですか?けなしてるんですか?」
「もちろん、べた褒めしている」

どこがですか…と、山下が肩を落とすと、加藤はおかしそうに笑った。

「異動までの間、あともう少しよろしく頼むな。盛り上げ隊長!」
「はーい、盛り下げないように頑張ります〜」
< 157 / 236 >

この作品をシェア

pagetop