魔法のいらないシンデレラ 3
「ちょっと、大丈夫なの?ひとり暮らしの部屋の鍵失くすなんて」
「うん、大丈夫。合鍵あるし」
「そうじゃなくて!誰かに拾われて、部屋に入られたりしたらどうするのよ?!」
「それはないよ。だって私、鍵を開けて部屋に入って、そこから失くしたのよ?いつもの棚の上になかったから、きっとどこかの引き出しの中にでも入れたんじゃないかしら。そのうち見つかるわよ」

はあー?と、正面の子は呆れている。

「それ、立派に酔っ払って記憶失くしてるじゃない。もうだめ!今日はそれ以上飲まないでよ?」
「えー、いいじゃない。せっかく久しぶりに会えたのにー。2年ぶりでしょー?もっと飲んでおしゃべりしようよー」

山下は、もう二人の会話に釘付けだった。

(この声、この話の内容…。後ろ姿しか見えないけど、きっとこの子は)

そう思った時、
「すみませーん、ウーロンハイ下さーい」と手を上げる子を、小雪、もうだめ!と止める声がした。

(…やっぱりか)

山下は、ハアーとため息をつく。
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