魔法のいらないシンデレラ 3
「え?あ、あの…あなたは?」

小雪の腕を掴んでいた子が、驚いて山下を見る。

「こんばんは。俺は小雪ちゃんの職場の同僚です。君達が偶然あとから入って来た事に気付いてたんだけど、邪魔しちゃ悪いから声をかけなかったんだ」
「そうなんですか!良かったー。小雪、こんなになっちゃって、私1人でどうやって帰らせようかと思ってて…」

山下は、小雪を支えつつポケットから名刺を取り出す。

「俺はこういう者です。彼女と自宅方面が一緒なんだ。これからタクシーで帰るつもりだったから、ついでに彼女をアパートまで送って行くよ」

怪しまれないように考えながらそう言ったが、女の子は少しためらっているようだった。

「そ、そうですか…。あの、小雪はあなたのこと、良く知ってるんでしょうか?」

きちんとした子だな、この子くらい慎重であって欲しいものだと思いながら、山下は提案する。
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