魔法のいらないシンデレラ 3
山下は、小雪の暗い表情がとにかく気になって仕方なかった。

(いったいどうしたっていうんだ?まるでいつもとは別人みたいだ)

「小雪ちゃん、他にも何か悩み事があるんじゃない?何かあったの?」

すると小雪は、ハッとしたように山下を見る。

ん?と顔を覗き込むと、小雪は慌てて下を向いた。

「俺には相談出来ないかな?言いにくい?」
「いえ、そんな事は…」
「じゃあ聞かせて。力になれるかは分からないけど、話を聞くくらいなら出来るから。それにずっと一人で抱え込むより、誰かに話をするだけで、少しは気分も軽くなるかもしれないし」

小雪はしばらくじっと黙っていたが、やがて、稜さん、と顔を上げた。

「ん?何?」
「私…、実家に帰らなきゃいけなくなって」
「それは、帰省するって事?」
「いえ、アパートを引き払って帰るんです。だから、ここでの仕事も、もう出来ない…」

そう言うと、大きな目から涙が一気に溢れ出す。
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