魔法のいらないシンデレラ 3
山下は、驚いて言葉に詰まる。

「そ、それは、どうして?なんでまた急に…」

小雪は、気持ちを落ち着かせようと必死に肩で息を繰り返して話し出す。

「一緒に居酒屋に行った幼馴染みの子が、家に帰って母親に話したらしくて。私とこんな事があって…みたいに。そしたらそれが、うちの両親の耳にも入って…。電話がかかってきたんです。酔っ払って男の人に送ってもらうとは何事だ?とか、ちゃんとお付き合いしてる人なんだろうな?とか、鍵を失くすなんて、不注意にもほどがある、とか」

ハンカチで涙を拭いながら、小雪は必死に話を続ける。

「そもそも、私が上京して働く事に両親は大反対だったんです。でも私は、どうしても一人で遠くで暮らしてみたくて、保育士の資格があれば、東京でも働けるからって説得して。絶対、心配かけるような事はしないからって、アパートの保証人にもなってもらって、でももう…」

その先は言葉を続けられなくなり、小雪は静かに泣き続ける。
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