魔法のいらないシンデレラ 3
第二十二章 最後に…
山下は、加藤や青木から少しずつ仕事の引き継ぎを受け始めていた。

正式な辞令が下りるまでは、他のメンバーに知らせる訳にはいかないが、皆もなんとなく気付いているようだった。

青木のデスクでパソコンを見ながら書類の説明を受けていると、失礼致しますと言って、赤ちゃんを抱いた瑠璃が入って来た。

「わあ、瑠璃ちゃん!」

皆はワイワイと瑠璃と赤ちゃんを取り囲む。

「元気そうだね、瑠璃ちゃん」
「はい、お陰様で。息子も問題なく大きくなってます」

皆は、抱っこ紐の中の赤ちゃんを覗き込む。

「確か、蓮くんだよね?初めましてー」
「可愛いなー。あ、お目々開いてる」
「おっ、俺のこと見てるぞ」
「違いますよ、俺と目が合ってます」
「ええー、違うぞ。蓮くん、俺を見て!」

グイグイ押し合いながら蓮を覗き込む男性陣を、奈々が制する。

「ほら、蓮くんがびっくりしちゃうじゃないですか。ねえ?蓮くん」

そう言って奈々が蓮に笑顔を向けると、蓮はニコッと笑った。

「あっ、笑ってくれた!可愛いー」

奈々の目から、ハートマークが出そうになっている。

そんな奈々に、青木は顔を真っ赤にして見とれていた。
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