魔法のいらないシンデレラ 3
「ねえ、瑠璃。やっぱり引っ越さないか?」

え?と瑠璃は顔を上げて一生を見る。

「もちろん、今すぐって訳ではないけどね。でも、すみれや赤ちゃんのことを考えたら、もっとのびのび育てられる場所の方がいいんじゃないかと思って」

もともと結婚後に新居を探そうとしていた一生に、その必要はないと言ったのは瑠璃だった。

そして気付けばそのまま、一生が独身の頃から借りているマンションに、ずっと住み続けている。

「それにね、最近社員達の生活の変化について考えてて…。早瀬と杉下くんもそうだけど、結婚する社員が増えている。子どもが産まれる家庭には、産休や育休を取りやすいようにしてるつもりなんだけど、残念ながら女性社員の半数くらいは退職してしまうんだ。想像していたよりも、育児と仕事の両立は難しいって。なんとかならないかなあ。ここでの仕事が好きだと言ってくれる社員に、俺は出来るだけ長く続けて欲しいんだけど」

じっと一生の言葉を聞いていた瑠璃が、考えながら口を開く。
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