魔法のいらないシンデレラ 3
「すみれちゃん、これはバニラエッセンスと言います。どんな香りがする?」

すみれは顔を近付けてから、あまーい!いいかおり!と微笑む。

「そうね!これをピッピッて入れると、甘くていい香りのクッキーになるのよ」

ピッピッと言いながら、すみれはボウルにエッセンスを数滴加える。

「さあ!そしたらいよいよ、混ぜ混ぜしまーす」

小雪を真似て、すみれはおっかなびっくり手をボールに入れて混ぜ始める。

「いい?しっかり混ぜると、だんだん粘土みたいになるからね。頑張って!」
「はい!」

すみれは真剣な表情で、一生懸命生地をこねる。

「うん!いい感じね。そしたらこれをラップで挟んで平らに伸ばしてから、冷蔵庫で少し寝かせます」
「え?れいぞうこのなかに、おふとんがあるの?」
「うふふ。お布団はないんだけど、しばらく休ませるの」

冷蔵庫に生地を入れると、おやすみーと言って扉を閉めた。
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