魔法のいらないシンデレラ 3
「こゆせんせい、できた?もうできたんじゃない?」

すみれがソワソワとオーブンレンジの前に行く。

「もう少しよー、あとちょっと、あ!出来た!」

ピーという焼き上がりの音がして、思わずすみれは拍手する。

「ここからは熱いから、先生がするね」

そう言って手にミトンをはめると、小雪はクッキーを取り出してテーブルに置いた。

「わあー、できてる!おいしそう!」
「そうね、美味しそうに出来たわね。すみれちゃんの手作りクッキーよ」

では、味見をしてみましょう、と言って、小雪は小さめのクッキーを少し冷ましてからすみれに渡す。

すみれは、感激したようにクッキーをまじまじと見つめてから、そっと口に入れる。

モグモグと噛み締めると、おいしい!と目を輝かせた。

「良かった。自分で作るととっても美味しいわよね」
「うん!それにまだあったかいの。あったかいクッキーって、とってもおいしい」
「そうね、焼き立ては美味しいね」

そしてクッキーを冷ましてから、カラフルなチョコペンで色や模様を付けると、小さなビニール袋にクッキーを詰めていく。

「これはかあさま、これはとうさまで、あと、しらいしさんと、かなおねえさんと…」

すみれは一生懸命考えながら、クッキーを分けていった。

「できた!」

ラッピングし終わった、小さなたくさんの袋を前に、すみれは満足げに笑った。
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