魔法のいらないシンデレラ 3
誰もいなくなったナーサリーを見渡し、小雪は深々とお辞儀をする。

「お世話になりました」

綺麗に念入りに掃除と片付けをしたナーサリーに、最後のお別れをすると、小雪はきつく口を結んで部屋を出る。

何度も振り返りたくなる気持ちを抑え、ホテルのエントランスを出ると、そのままアパートへ向かった。

約束していた管理会社の人が、時間通りの16時半にやって来て、一緒に退去の確認をする。

「はい、結構です」

最後に玄関に錠を付け、ドアポケットにガムテープを貼ると、小雪を振り返って聞いてきた。

「東京での生活は、いかがでしたか?」

小雪は笑顔で答えた。

「とっても楽しかったです」

そして小さな鞄1つ持つと、羽田空港行きの電車に乗った。
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