魔法のいらないシンデレラ 3
「瑠璃ちゃん、ちょっといい?」
「あ、はい」

山下に呼ばれて、瑠璃は席を立つ。

廊下に出ると、山下は小声で聞いてきた。

「今日、すみれちゃんと蓮くんはナーサリー?」
「ええ、そうです」
「じゃあさ、その…先生は?小雪ちゃん?」
「え?いいえ」

小雪の名前が出た事に少し驚いてから、瑠璃は首を振る。

そっか…と山下はうつむいて呟いた。

瑠璃はそんな山下を見て、考えながら口を開く。

「山下さん、ご存知だったんですか?小雪先生のこと…」
「えっ?あ…、うん。知ってた」
「じゃあ、小雪先生と連絡は取れますか?」
「ううん。連絡先も知らないし、住所も知らない」

そうですか…と瑠璃もうつむく。

「瑠璃ちゃんは小雪ちゃんから、なんて話をされたの?」
「いえ、何も。最後にナーサリーで、これからは、違う場所に派遣される事が多くなるから、しばらくここには来られなくなるかもって事だけ。でも、お正月が過ぎた頃に手紙が届いて…」
「手紙?小雪ちゃんから?」

瑠璃は頷くと、ちょっと待ってて下さいと言って部屋に戻り、薄いグリーンの封筒を持って来た。
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