魔法のいらないシンデレラ 3
山下は小雪をホテルの救護室に運ぶと、中にいた看護師に手当てを頼み、企画広報課に戻った。

鞄とコートを持つと、隣の席の加藤に声をかける。

「すみません、加藤さん。大事な子がケガしたので、早退させて下さい。あと俺、明日は腹が痛くなる予定なので、休ませて下さい」
「…は?」

しばし目が点になった後、加藤は盛大に笑い始めた。

「あっははは!オッケー。後悔のないようにな!」

山下はもう一度頭を下げると、急いで部屋を出て行った。

救護室に戻り、再び小雪を抱きかかえてタクシーに乗る。

いつぞやの整形外科に行くと、先生は、診察室に入って来た小雪と山下を二度見した。
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