魔法のいらないシンデレラ 3
「清河さん、こんにちは!」

『ガラス工房 清河』の木の看板が立て掛けてある軒下から、瑠璃が中に声をかける。

「おおー、瑠璃ちゃんに一生さん。待っとったで。さあさあ、中へどうぞ」

奥の作業場から、作務衣姿の清河が顔を出す。

と、清河の後ろから二人の若い男の子が現れた。

「あっ、もしかして、お弟子さん?」
という瑠璃の声は、あーっ!と大きな清河の声でかき消された。

「もしや、お嬢ちゃんがすみれちゃんか?こりゃまた、可愛いのう〜」

これ以上ないほど目尻を下げ、ニコニコと笑いかける清河に、すみれは、こんにちはと頭を下げる。

「すみれ、こちらは清河さんだよ」

一生の言葉に、すみれは真剣な顔で呟く。

「き、ようかんさん?」
「ようかんじゃないよ、きよかわさん」

二人のやり取りに、清河はアハハと笑う。

「なんでもええで。ようかんでも、まんじゅうでも」
「え、おまんじゅう?」

キョトンとするすみれに、清河はますます笑う。

「こりゃ参ったな。ほんまに可愛いらしいわー」

瑠璃や一生も笑い出す。

(良かった。清河さん、とってもお元気そう)

瑠璃はホッとして、一生と顔を見合わせた。
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