魔法のいらないシンデレラ 3
「清河さん、ありがとうございました。すみれ、お待たせ」

瑠璃と一生は、工房から奥の和室に戻ると、すみれの面倒を見てくれていた清河に礼を言う。

すみれはすっかり気を許したようで、清河の膝の上に座って、きよじいじ、と呼ぶようになっていた。

「いや、ほんまに可愛いらしいわ。長生きして良かったわー」
「まあ、清河さんたら」

瑠璃もふふっと笑う。

「友達のじいさん達が、孫にデレデレになる気持ちがよう分かる。あ、そうや!すみれちゃん、ちょっとこれ持ってみてくれへんか?」

清河は、座卓の上にあった湯呑みをすみれに握らせる。

「んー、やっぱりもう少し小さい方がええな…」

そう言って真剣に考え込む。

「きよじいじ?」

すみれが顔を見上げると、ああ、すまんすまんと清河は笑顔になる。

「すみれちゃんにな、ガラスのコップ作ったろうと思って。それと、小さい皿も。ようかんとか、まんじゅう載せられる皿な」
「わあ!いいんですか?」

瑠璃が思わず声を上げる。

「ああ、作らせてくれな。小さいおててに持ちやすいように、落としてもなかなか割れへんように作るわな。色は、もちろんすみれ色や」

すみれちゃんやからな、と言って清河はまた豪快にアハハと笑った。
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