魔法のいらないシンデレラ 3
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

瑠璃は、最後に清河に、祖母の料亭の重箱を渡した。

「これ、日持ちがするものを詰めてあるので、良かったら召し上がって下さいね」
「助かるわ。料理はからっきし出来へんからな」

そんなやり取りの横で、一生は弟子の二人に頭を下げる。

「清河さんのこと、よろしくお願いします。何かあったら、いつでも電話で相談してくれ」
「はい!お任せ下さい」

頼もしい二人の返事に、一生もホッとして頷いた。

やがて手配したタクシーが到着する。

「じゃあ清河さん。お元気でね」
「ああ。瑠璃ちゃんも、元気な赤ちゃん産んでな」
「きよじいじ、さようなら」
「すみれちゃん、またな。元気でな」

すみれの小さな手をギュッと握ってから、清河は名残惜しそうに笑って手を振った。
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