魔法のいらないシンデレラ 3
「たくさんあるよー。パトカーに、ダンプカーに、あれ?これってなんだっけ?」

小雪がミニカーを1つ取り上げて蒼真に見せると、消防車!と元気良く答えてくれる。

「そうだ、消防車だったね。すごーい、蒼真くん、良く知ってるね。じゃあこれは?」
「ショベルカー!こっちは、救急車!」
「なんでも知ってるねー。じゃあ、町に車を走らせてみようか」

棚の中から折り畳んだ大きなシートを取り出すと、小雪は、見ててね?と言って、蒼真の前に広げてみせた。

「うわー、町だ!」
「そう、踏切や横断歩道もあるよ。あ、警察署もあるね。パトカー、ここから出発させようか?」

シートに描かれた町並みに、蒼真は夢中でミニカーを走らせる。

「線路もあるよ。電車も走らせてみよう!」
「うん!」

蒼真は、もう背後の母親を振り返る事もなく、目を輝かせて遊んでいる。

小雪は母親にこっそり、あとはお任せ下さいと囁いた。

母親は頷いて、そーっと部屋を出て行く。

やがてお迎えの時間になり、母親が、帰るよと声をかけても、蒼真は、まだ遊びたい!と言って、逆に母親を困らせるほどだった。
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