魔法のいらないシンデレラ 3
「良く分かった。その話、進めなさい」
「本当ですか?!」
「ああ。だが、きちんと社員のニーズに合うよう、慎重にヒヤリングを重ねなさい。社員に長くホテルで働いてもらえるように」
「はい!ありがとうございます」

一生と瑠璃が頭を下げると、ふっと社長は父親の顔に戻って笑った。

「一生、お前もようやく一人前の総支配人らしくなったな。これも全て瑠璃ちゃんのおかげだ」
「え、いえ、とんでもない」

瑠璃が慌てて否定すると、一生の父は、いや、と続ける。

「瑠璃ちゃんに拾ってもらえなかったら、今頃お前、どうなってたか」
「ひ、ひろっ?そ、そんな、お父様…」

焦る瑠璃に、一生もいたずらっぽく微笑む。

「ほんと。瑠璃に拾ってもらえて良かったよ、俺」
「い、一生さんまで、なんてことを…」

ハハハ!と、一生と父は声を上げて笑う。

「これからも、息子をよろしくな。瑠璃ちゃん」
「これからも、俺をよろしくな。瑠璃」

瑠璃はもう、あたふたするばかりだった。
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