魔法のいらないシンデレラ 3
「私はですね、女房の父親と同居しております。まだまだ元気ですが足が不自由なので、一人で出掛けることが困難でして…。可能であれば、車椅子で出掛けやすい街に、バリアフリーの家を建てようかとも思っておりました。皆さんのお話もとても興味深く、私も是非このプロジェクトに関わらせて頂きたいと意気込んでおります。どうぞよろしくお願いします」

拍手をしながら、やはり介護の問題も大きいのだなと一生は考え込む。

次に、ややためらいながら立ち上がったのは、青木だった。

「あの、企画広報課の青木と申します。その…自己紹介の前に1つ確認させて頂きたい事がありまして」
「ん、なんだ?」

一生が促す。

「はい。その…私は今30代で独身なのですが、このプロジェクトが終わるまでその立場を継続させなくてはいけないのでしょうか?」
「いや、そんな事はない。さっき早瀬が説明した通り、生活の変化があって当然だ。そしてそれに合わせた考え方の変化も、是非率直に聞かせてもらいたい」
「そうなのですね!では、結婚する事になっても構わないでしょうか?」
「ああ、もちろんだ」

すると青木は、パッと顔を輝かせて奈々を振り返った。

「いいんだって!良かったな、奈々!…あ」

青木が、しまったと顔をしかめた時には既に遅く…

その場にいた全員が仰け反る中、奈々はひときわ顔を真っ赤にして固まっていた。
< 92 / 236 >

この作品をシェア

pagetop