バレンタインチョコと四人の恋
「…俺は、離れてなんていかないよ」


「…え?」


「百瀬さんはいつだって自分の気持ちに正直なだけで、それを相手にうまく伝えるのが少し苦手なんじゃないかな。思ったことをそのまま伝えるんじゃなくて、少しだけ言い方を変えるだけで、もしかしたら百瀬さんの気持ちがちゃんと相手に届くかもよ。百瀬さんが人と関わるのをやめてしまわないで。百瀬さんが諦めないなら、俺は関わるのをやめない。離れていかないよ」




…どうでも、いいと思っていたはずなのに。




「…本当は、うらやましかったの。今日来たばかりなのにみんなとすぐに打ち解けられる碧山くんが。私はいつだって嫌われてきたから、それを当たり前だと思ってきたから、好かれる方法なんて知らなくて、諦めていた」




碧山くんは私の理想とする人だから、イライラするのだろう。


私にはできないことをあまりにも簡単にやってのけてしまうから。




「俺は何があっても、離れない!百瀬さんの友達はやめないから!」


「…本当、変な人ね」




こんな人にイライラしていたのが馬鹿らしくなってくる。


私から離れないと言ってくれたのは、碧山くんが初めてだった。
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