バレンタインチョコと四人の恋
ばくばくとうるさい心臓は、しばらく鳴り止まなかった。





それから半年が経った今でもあの時の碧山くんのことは忘れられないし、気づいたら目で追ってしまう。


それでも話しかける勇気なんてないし、同じクラスではなかったことをあの後知り、もっと話しておけばよかったと後悔したがやっぱり行動には移せなかった。



私は昔からそうだ。


自我が弱く、いつも行動する前に大抵のことは諦めてしまう。



今だって、依茉ちゃんと好きな人が被ってしまい、諦めようと思っている自分がいる。


依茉ちゃんは、人見知りでなかなかみんなの輪に入れなかった私の隣にいつもいてくれて、依茉ちゃんがいてくれたおかげで中学で浮くことなく毎日が楽しかった。


そんな私の恩人みたいな人だから、だから私の恋よりも、友達の恋の方が大切だと思ってしまう。


幸い、依茉ちゃんには伝えるタイミングがなく私の気持ちは教えていないから、気づかれることなく碧山くんを諦められる。



うん、そうしよう。


碧山くんへの気持ちは、なかったことにしよう。
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