バレンタインチョコと四人の恋
…もしかしたら、碧山くんと帰ったのかも。


ドーナツだって、碧山くんと行っているのかもしれない。依茉ちゃんのことだからきっとそうだ。



ちくりと痛む胸に気づかないふりをして、どうしようかと雨の降る空を見上げる。


雨を降らせる灰色に曇る空は、私の心みたいだと思った。




「あれ、初音さん?」


「…っ!」




名前を呼ばれ何気なく振り返ると、碧山くんがビニール傘を片手に立っていて驚く。



どうして碧山くんがいるの…?


依茉ちゃんと帰ったんじゃないの…?



…って、そんなことよりも…。




「わ、私の名前、知って…?」




入学式の日に名前を言ったわけでもないし、クラスも違うのに私の名前を知ってくれていたことが一番驚いた。
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