バレンタインチョコと四人の恋
「え?ああ、依茉ちゃんと話してるとよく初音さんの名前出てくるから、俺も覚えちゃったんだ」


「あ、依茉ちゃん…」




そうだよね、依茉ちゃんが話してくれていなければ、私の名前なんて知りもしなかったよね…。


わかっていたことなのに、ずきずきと胸が痛い。



きっとあの日の些細な出来事だって、碧山くんは覚えていないのに。




「どうしたの?帰らないの?」


「え、あ、その…。あ、雨、降ってて、傘忘れてしまって…」




なぜか少し泣きそうになり、慌てて視線を逸らし、外を指差す。




「ああ、予報じゃ晴れだったもんね。俺も置き傘してなかったら、危なかったよ。…あ、もしよかったら入ってく?」


「え」




驚いて碧山くんを凝視してしまう。


入る、ということは、碧山くんとその、相合傘、をするということ…?
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