バレンタインチョコと四人の恋
「あはは、同い年なんだから敬語じゃなくていいよ。面白いね、初音さん」




不覚にも笑顔を見れて、さっきまでチクチクと痛んでいた胸がもう痛くなかった。



それから碧山くんの家までは十分ほどでつき、傘を一本借りてわかれた。


あまりにも近い距離にドキドキしすぎて何を話していたかはよく思い出せない。



たった一本のビニール傘なのに、碧山くんから借りたものだと思うと、それだけで少し嬉しかった。





十二月に入ったというのに、まだ碧山くんに傘を返すことができていない。


教室まで話しかけにいく勇気なんてないし、廊下で見かけても相変わらず逃げてしまう。



なおらない臆病な自分に嫌気が差してきた頃、ある日突然碧山くんからLINEが来た。




宙翔:急に連絡してごめんね。連絡待ってたんだけど、なかなか来ないから傘のこと忘れてるのかなーって思って笑




そういえば傘を返す時に連絡するから交換しようと言って、LINEを追加していたのをすっかり忘れていた。
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