バレンタインチョコと四人の恋
二人は私に気づくことなく、笑いながらどんどん歩いていく。



その後を追いかけて、その子は誰かと聞ければ良かった。


だけど私にはそんな勇気はない。




「私が幼い頃から見てたのは君だけだよ」




言おうと思っていた言葉がぽつりと漏れたが、その言葉は誰にも届くことなく雨の中に消えていった。



私はずっと宙翔だけを見てきた。


だけど、宙翔はやっぱり違かったんだね…。





「彩葉ー。大丈夫?生きてるー?」




布団にもぐりながらスマホを眺めていると、部屋の扉がノックされた。


この声は、咲希だ。




「…どうしたの」




部屋の扉を開けると、ビニール袋を持った咲希がやっぱり立っていた。
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