バレンタインチョコと四人の恋
「うわ、なんか痩せた?ちゃんと食べてんの?おばさんも何も原因言わないからって心配してたよ。お邪魔しまーす」


「…大丈夫だから、帰っていいよ」


「いやいや、全然大丈夫じゃないでしょ。学校も来ないで家に引きこもっちゃって、連絡だって返してくれないくせに何言ってんの」




咲希はそう言うなり部屋にずかずかと入ってきて、閉め切っていたカーテンを豪快に開け、散らかっていた机の上の物を片付け出した。




「…ごめん」


「それは、何に対してのごめん?」


「…全部」




あんなに告白するんだと意気込んでいたくせに、何もできなかった自分が恥ずかしい。


振られたわけでもないし確認したわけでもないのに、引きこもって周りに心配だけかけて、何をしているんだろう。




「あのさ、いい加減にしなよ」


「…え?」


「話は聞いてるからそりゃ彩葉にも同情するけど、それよりも私は今怒ってんの!いつまでもうだうだして、一人で抱え込むな!おばさんに言いにくいとしても、私は全部知ってんだからせめて私に頼ってよ。なんで全部一人で抱え込もうとしてんの?散々今まで彩葉の恋バナ聞いてきたのに、なんでこんな大事な時は頼ってくれないの?」




咲希のもっともな言葉に何も言い返せないでいると、ぐいっと顔を持ち上げられ、口の中にチョコレートを突っ込まれた。




「はい、お説教はここまで。次は慰めタイムね。ほら、まずは甘いもの食べて」
< 69 / 90 >

この作品をシェア

pagetop