うそつきな唇に、キス




琴から、今日の訪問の理由を伝えさせてある、と言っていたけど、どうやら今までの反応を見るに、ちゃんと伝わっていたらしい。



「本日は、定期報告とともに、現在組内で問題になっている情報漏洩元についての査察と伺っておりますが……える様おひとりでなされるのですか?」

「はい。……それが何か、問題が?」



まるでわたしじゃ力不足とでも言いたげな物言いに、ちらりと彼を見上げると、首をぶんぶんもげるんじゃないかと思うほど横に振った。



「い、いえ!そんなことは……!!」

「では、まず定期報告から伺ってもよろしいですか?」

「もちろんです!」



……若サマ、一体この人に何したんだろ。

さっきからずっと怯えてるよ、この人。それも、若頭という単語を出した時から。

ある程度の情報は聞いているとはいえ、若サマがこの人たちに何かをした覚えはないと思うんだけど、な……。



祐庵会内の地下空間は存外広く、まるでアリの巣のように道が縦横に伸びていて、覚えるのには一苦労した。

こんな組織も存在しているんだなあ。



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