うそつきな唇に、キス



相模さんの部屋でも、もう少し観葉植物などの家具があったのだけど。あと書類まみれのデスクとか。

でも、文庫本は初めて見たかな。



「はあ、……ったく。お前らほんと時と場所を考えろよな。っつーか、俺活字読むの苦手なんだけど……」

「安心してください!オレもっす!」

「お前はただ学がねえだけだろーが!……なあ渡貫。読み上げてくれないか?」

「すみません。目が悪いので……」

「それウチに来てから5年間ずっと言ってないか?いい加減メガネ買え?コンタクトでもいいから……」

「では、休みが取れましたら」

「それ言われるとまるでここがブラックみたいに聞こえるだろーが……。あとそれも5年間ずっと言ってるよな?」



背後で交わされる会話に耳を傾けながら、渡貫さんに許可をもらって、ぱらぱらとグラフのみが挟まれたファイルに一通り目を通したのち、話が終わった彼らを振り返った。



「ここまでお付き合いいただきありがとうございました。これにて査察は終了となります。最後に、今後についてお話しをしたいのですが、お時間は大丈夫でしょうか」

「はい。かまいません」


< 108 / 239 >

この作品をシェア

pagetop