うそつきな唇に、キス
拘束する腕は解けないまま。
誰が通るかもわからぬ場所で、会話は続く。
「それより、こんなことをしていて大丈夫なんですか?七宮さんにとって非常に都合が悪い状況だと思うのですが」
「生憎だが、この近辺には近づかないよう部下には言ってある。つまり、思う存分アンタを尋問できるってわけ。わかる?」
「……尋問、ですか」
この人にとって、若サマが地雷なのは知っている。ただ、その理由は知らない。
……否、どうでもいいのだ。
「誤解がないよう言っておきますが、わたしは前者で述べた通り、ふたつの事案についてのみ行動することを許されています。それ以外について、口やら手を出すつもりは毛頭ないのです」
「でも、それがアンタ自身の目的とは限らないだろう?」
「……まあ、そうですね」
どうやら、納得してもらうことは無理そうだった。
七宮さんを若長に、若サマが直々に選んだのだから、それなりに頭が回る人だとは思うんだけど……今は頭に血が上っているのか、冷静な話し合いをすることはできそうにない。
……なら。