うそつきな唇に、キス



「ぇぐ……っ!!」



実力行使にでる他なかった。


わたしが女だからと油断していたのか、手足も拘束していなかった彼の腕を捻り上げて体勢を逆転させることなんて、今からしようとしていることよりも簡単で。



「な、んっ……!!」

「─────安心してください。あなたのご家族(・・・)に危害を加えるようなことは致しません」



瞬間、困惑ばかり見せていた七宮くんの瞳に、明らかな殺意がちらついた。



「……って、こんなこと言うと脅してるように聞こえるんでしたっけ。ほんと、こっち側の人は額面通り受け取られないことに関しては困りものですね」



琴や、最近だと睿霸にも注意されたなあ。

言葉選びには充分気をつけろ、って。そういうつもりがなくても、変に勘繰られることがあるから、って。


この場において、それが今現実になってしまっている。



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