うそつきな唇に、キス



「それにしても、よく考えましたね。ガワを小説に見せかけて、中身は抜き取った情報の貯蔵庫にするなんて。これ、誰かと貸し借りをしてました?そのような方がいるならその人も共犯なので、一網打尽にしたいのですが」

「ま、待ってください、えるさん!」

「……はい?なんですか、相模さん」



わたしの右膝の下で必死に体を動かそうとしている渡貫さんを横目に、ちらりと相模さんを伺えば、何が何だかわからないような顔をしていた。



「そいつは、目が悪いんです!えるさんも渡貫の部屋に入ってメガネなどもないことは把握しているはずですよね?小さな活字ばかり書かれた書類を目にしたら、すぐ目頭を揉んで俺に突き返してくるほどで……!とてもそんな物を作ったり読んだりすることなんて……!」

「そ、そーだそーだ!オレが手書きの始末書代わりに書いてもらおうとした時だって、変な字になるからって断られたし……!!」

「七宮は黙ってろ!」

「あいでっ!!!」

「ああ、それはですね」



この場にいるすべての人の疑問に答えようと、確信と推測が入り混じった言葉が口を突いて出た。



「目が悪いと言うのが、嘘だからですよ」

「……え?」

「というより、バレたくないことを隠すためのカモフラージュの嘘、と言った方が正しいでしょうか」



嘘の上に、新しい嘘を重ねる。

まるで、降り積もる雪のように、際限なく。



「渡貫さん、あなた───学習障害、それもディスレクシアを持っているでしょう?」



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