うそつきな唇に、キス
ゆったりと腰掛けている様は、まるでどこかの王様のよう。
事実、彼はこの空間内では王様のような存在なのだろう。
きらりと右耳にだけ輝くグレーのピアスが、彼の威厳を象徴しているかのように輝いている。
「……お前、オメガではなくアルファか?もしくは、知識量が常軌を逸しているオメガか……」
「………さあ。どっちでしょうね」
アルファにオメガにベータ。
その三種の第二の性に比例した階級が存在するこの社会で、アルファとオメガはどちらにしてもある種奇特な意味を持つ。
アルファは、その人物が持つ圧倒的なカリスマ性、もとい才能が秀ですぎていて、社会的地位は他を寄せつけぬほどに高い。
かわってオメガは、そんなアルファを唯一狂わせることができる存在で、それはベータも含まれる。他にも、番だかなんだかよくわからない関係を繋ぐことも可能らしいけれど、そのあたりはあまりよくわかっていない。
ただ、頸を噛むとかなんとか……。
「どちらにしろ、ベータという可能性はほぼ消えたな」
「そうですか」