うそつきな唇に、キス



問題は、確固たる証拠だった。……けど、鍵がデジタル式になっていなかったおかげで、侵入は容易くて。



「なにか反論があるならお聞きしますよ」

「……お手上げですね。まさかあの若頭さまに、これほど有能な側近が出来ていたとは」

「あ、それとこれを貸していた人物を吐いてくれたら嬉しいのですが」

「……まっ、ちょっとま、」



なあんて、割と穏便に事が済みそうな雰囲気に、内心ホッとしながら後片付けをしようとしていたら。



「────える様、すこし、よろしいでしょうか」



ふと、固い声が、その場に落ちた。

震えた、か細い声ではなく。しっかりと芯の通った、まるで覚悟でも決まったかのような、声の持ち主は。



「……なんでしょうか、相模さん」



この会の長である、相模さんのものだった。



「まずは、うちの者の愚行を、会を代表して謝罪いたします。誠に申し訳ありませんでした」



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