うそつきな唇に、キス
だいの、それもわたしより一回りほども上の大人が、わたしに頭を下げている。
そんな異常が、普通だとされるこの世界で、その謝罪はどれほどの足しになるのだろう。
「わたしへの謝罪は不要です。若サマには後日お取次をなさってください。その時にまた改めて謝罪を。沙汰は追って下されると思いますので」
「はい、承知致しました。では協力者の確保ですが、」
「ま、待ってくれよ!」
淡々と進んでいた会話が、七宮さんの焦ったような声で不意に途切れた。
そんな七宮さんはというと、慌てて立ち上がったはいいものの、まるで迷子の子供のように視線を右往左往させたまま黙り込んでしまって。
「な、んで、会長はそんな冷静なんだよ!かんちゃんは、」
「────七宮、座りなさい。今、この場にいる以上、お前は祐庵会の若長としてのみ発言が許されている。そのことは理解しているな?」
「……っ、」
今までの気楽さはどこへやら。冷徹な光を宿した相模さんは、七宮さんの甘い言葉を軽く一蹴した。