うそつきな唇に、キス



「ですが、あなた方はすでにこちらを切り捨てる心づもりが固まっておられるのでしょう。一度切り捨てられかけた組織、ゆえに危うい地盤。それを覆すには、不祥事など許されない。……それは、あなた方にもお分かりのはず」

「……それを逆恨みし、後ろから刺すつもりだと、こちらが想定していないとお思いですか?」

「………それに関しては、こちらから何も言えることはございません。ただ、二度も我らに救いの手を差し伸べていただけるほど高い優先順位にいないことは、重々承知しているとお知りおきください」



再度低頭した相模さんを呆然と眺めていた七宮さんも、不意にハッと頭を上げかと思うと、これまた勢いよく頭を下げられてしまった。

……さて、どうしよう。頭は下げられ慣れていないし、正直わたしの一存でどうこうできるわけじゃないけれど……。


そこまで考えて、ふと思い出した。

ここに来る前に、車内で若サマに聞いたことを。



「……はあ、わかりました。では、渡貫さんの身柄を一旦こちらでお預かりしていただく、という前提のもとで、後片付けをお願いしましょうか」



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