うそつきな唇に、キス
相模さんの理解力と判断力に心の中で安堵の息をついたのち、その視線を隣にいた七宮さんへと移した。
「七宮さん」
「……はい、なんでございましょう」
「よろしければ、渡貫さんの拘束を代わっていただけませんか?少々この体勢が辛くなってきてしまって……」
「了解で……、かしこまりました」
どうやら、必死で敬語になるよう気をつけているらしい。
……そんなに怖いこと、わたし言った、のかな?こっち側では割と普通のことを言ったと思うのだけど……。
渡貫さんの身柄を、文字通り祐庵会へ引き渡す……けど、七宮さんのしっかりした拘束を見るに、どうやら腹は決まったらしい。
さっきまでの甘えた発言が消えているのがその証拠、かな。
さっきの騒動で床に転がってしまった物を拾いながら、わたしも腹を決めた。
……さて。本題は、ここからだ。
「……相模さん、そして七宮さん。渡貫さんの身柄を預ける条件として、おふたりに、もしわたしの口利きが通った場合にのみ、お願いしたいことがございます」
「はい、なんなりとお申し付けください」
わたしの真剣な声音に呼応するように、相模さんの声も少し固さを帯びた。
「実は────、」