うそつきな唇に、キス





「あんなに澄んだ海、生まれて初めて見ました!っていうか、こんなに空って青かったんですね!!」

「空の青さを今頃知るか……っていうか、えるマジでテンション上がってんな」

「え、そんなに目に見えて上がってます?」

「上がってるわ」

「上がっているな」



つい最近、夏休み、所謂夏季休暇に突入した。

そもそもわたしが編入したのが夏休み直前だったから、入ってすぐ休暇になるという少し残念なことになってしまったのだけど、それがどうでもよくなるくらいには、休みを満喫してしまっている。

今日はいつもと違う白い車とか、周囲が鬱蒼とした森と崖、それに海で囲まれていることとか。そんなのは気にならないくらいに。



というのも、そもそもこうなった経緯が、数日前。

ちょうど、若サマのおつかいを済ませた一週間後。



『える、何か欲しいものはあるか?』



なあんてことを、若サマに聞かれたのが発端だった。



『え、欲しいもの、ですか……?』



本当に唐突、いきなりすぎて、なんて答えるのがベストなのかその時はかなり真剣に考えた。



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