うそつきな唇に、キス



『……え、と、すみません、思いつかなくて……』

『おい若、それじゃえるに意味伝わんねーだろうが!』



その後、割って入って来てくれた琴のおかげで、よくやく詳細が飲み込めた。

どうやら、先のおつかいの功績で、若サマにわたしの願いをなんでもひとつ聞かせる権利が与えられたらしく。


……正直なところ、そこまでの功績とは思ってなくて、聞いた時はちょっと面食らってしまった。

で、その後琴に急かされて、ふとテレビに映ったビーチを指差した結果が、現状という訳なのである。



「それにしても、本当に大丈夫なんですか……?一週間も若頭サマを貸し切っちゃって……。それに若サマ、昨日まで体調崩して部屋にこもってましたし……」

「それは度々あることだから気にするな。もともと体が丈夫な奴ではないんだし。おつかいの件も、えるが若に渡したあの小説に偽造した中身、それなりにヤバいこと書いてあったしな」

「へえ、そうなんですね」



興味など微塵も滲んでいない声をあげれば、もう少し興味を示せよ、と目で琴に訴えられた。



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