うそつきな唇に、キス
「……本当にいいのか?」
「はい」
なんの憂いもなく頷くと、彼はゆるりとスモークがかかった夜の街へと目を移して。
「………える」
「え?」
「お前の名前だ」
本当につけてくれるとは思っていなかったから、ちょっと驚いた。
そして、顔に似合わず、その口から柔らかい名前が飛び出してきたことにも。
「どこからそんな名前が……」
「お前は、Liarなのだろう?」
皮肉げに笑ったその顔に、ああ、とひどく納得してしまった。
ライアーの頭文字からとって、える。なんともまあ安直な名付けだ。
けれど、それくらいがちょうどいいのかもしれない。嘘で塗り固められた言葉でしか繋がっていない、わたしたちには。
「……わかりました。じゃあ、あなたたちのことはなんと呼べばいいですか?」