うそつきな唇に、キス



その道のプロ、というのが若干気にならなくもないけど、なんとなく予想はつくから根掘り葉掘り聞かないでおく。



「じゃあこの私服もその道のプロさんが?」

「いや、それは単に琴吹の好みだろう」

「別に好みじゃないっつってんだろ!ただえるに似合いそうなやつ見繕ってきてるだけだから!」

「琴、これ似合ってます?」

「当たり前だろ!」



俺が選んだんだから!と豪語する琴の方が、羞恥心を育んだ方がいいと思う。



「若サマ、」

「……なんだ」

「……あー、や、えと、その、」



勢いで若サマにも聞きそうになって、慌てて言い淀んだ。


うーん、ファッションのことについてはあまり詳しくないけど、短パンにオフショルダーのブラウスなんて、誰が着てもそれなりに映るのでは?と思い直して、けどここまで言って聞かないのもなあ、と悩んだ結果。



「……これ、似合ってますかね?」



流れで聞いてしまった。

若サマなら知るか、とか、それをおれに聞いてどうする、あたりの返答かなあ、と思っていたら。



「……琴吹も言っていただろう。似合わない物をおれは用意させない」



どうやらこの場には羞恥心を抱く人間はいないらしい。



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