うそつきな唇に、キス
いきなり口調が崩れたと思ったら、ああ、この人苦労人なんだなあということがすぐにわかった。
言葉の節々から滲み出る、世話焼き人オーラとでも言うべきものがあったから。
「……人前だがいいのか。口調が崩れているが」
「えるが若色に染まりそうだからだよクソがふたりとも口調悪かったらビビると思ってわざわざ敬語継続してやってたのにテメェがそれを全部ドブに捨てるようなことばっか言ってるからこうなってんだよ!!!」
「……このように、琴吹は少々癇癪持ちだ。話す時は言葉を慎重に選べ」
「はい、わかりました」
「……ほんっとお前は……」
足を組み替え、いまだ悠然と構えている彼に、琴は言い返す言葉も尽きたように口を閉じた。
最後の悪あがきに、特大ため息をひとつ落としていたけど。
「コイツはおれの右腕のようなものだが、世話係を主にさせている。お前も何か不便があればコイツに言え」
「俺はお前の世話係に降格した覚えはねえぞ……」