うそつきな唇に、キス




そして、あれから。無事ベンチで時間を潰していた若サマと合流して、わたし達一向は、陽が傾いている道を辿っていた。



「…………というか、なんで買い物と移動で一日潰れてるんですか?」

「いや朝家出て昼にこっちついたあと買い物してたらそりゃそうなるだろ」

「エッ」

「お前の時間感覚どうなってんだよ……」



どうなってる、と言われても、以前はルーティン化したことしかしなかったから、そこまで狂ってはいないと思う。

……まあ、いた場所がいた場所だけに、そもそもそんなものは存在しなかった、という方が正しいけれど。


……でも、そう、だなあ。



「海に入るのは明日ですかあ……」

「じゃあ今日はバーベキューだな」

「ばーべきゅーって、あの夏の海でする恒例のやつですか?」

「その知識は一体どこから仕入れて来たんだよ?」

「……お前の常識が、未だによくわからないのだが」



いつのまにか時間が過ぎている、っていう感覚は、悪くないかもしれない。



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