うそつきな唇に、キス
そう琴がぼやいたとほぼ同時に、車がゆっくりと停車した。
「着いたぞ」
琴の言葉を聞く前にドアを開いて出て行く彼に続いて出ると。
「……なんか、大きくないですか?」
「そりゃデカいからな、この家」
荘厳な和風家屋の門扉が出迎えた。
「言うほど大きくはないだろう」
「お前もなかなかに箱入りだと思うけどな……」
そう言った琴は、門扉を少し開けて顔だけを覗かせ、向こう側にいる人と何か会話をしているようだった。
その間に、隣にいた人はすたすたと門扉の方ではなく、道沿いにまっすぐ歩いて行く。
「……あの、どこ行くんですか?」
「家だ」
「あれがお家じゃないんですか?」
「ちがう」
どうやら違うらしい。……いやでも、さっきのふたりの会話からして、家であることに違いはないと思うんだけど……。