うそつきな唇に、キス



そう琴がぼやいたとほぼ同時に、車がゆっくりと停車した。



「着いたぞ」



琴の言葉を聞く前にドアを開いて出て行く彼に続いて出ると。



「……なんか、大きくないですか?」

「そりゃデカいからな、この家」



荘厳な和風家屋の門扉が出迎えた。



「言うほど大きくはないだろう」

「お前もなかなかに箱入りだと思うけどな……」



そう言った琴は、門扉を少し開けて顔だけを覗かせ、向こう側にいる人と何か会話をしているようだった。


その間に、隣にいた人はすたすたと門扉の方ではなく、道沿いにまっすぐ歩いて行く。



「……あの、どこ行くんですか?」

「家だ」

「あれがお家じゃないんですか?」

「ちがう」



どうやら違うらしい。……いやでも、さっきのふたりの会話からして、家であることに違いはないと思うんだけど……。


< 17 / 217 >

この作品をシェア

pagetop