うそつきな唇に、キス
琴、と。名前を呼ぶ前に、彼はもう飛び出していた。
なんか、バキッ、とか、ゴキッとか、人体からでちゃいけないあらゆる音がしていた気がしたけど、それは全部スルーして。
「……あ、これ、ありがとうございました」
若サマの方を振り返った、ら。
「……え、あ、な、なんですか?」
どうしてか、すごく据わった目をして見下ろされていた。
「………、どれだけ射撃が上手い達人であろうが、通常は発砲時に少なからず手振れが発生する。なのに、なぜ当たり前のように、車高という狭い隙間から、正確に相手の足を撃ち抜けるのか……」
「あの、まさか若サマもわたしを化け物だと思ってます?」
「こんなことができる人間はもう人間ではないだろう」
「あ、完全に化け物認定されてますね」
若サマの痛い視線をそろりとかわしながら、貸してもらっていた銃を無理矢理その手に握らせる。
「わたし、言ったじゃないですか。若サマのことは、絶対に守るって」